兄弟間の遺産相続―起こりうるトラブルと解決方法―

ご両親が亡くなり、遺産相続の必要が出てくると、今まで仲の良かった兄弟の関係が突然悪化することがあります。

その原因には「遺産の分け方で意見が食い違う」「親の遺産を使い込んでいた兄弟がいた」「生前親の介護をしていたので、多く遺産を分けてほしいという兄弟がいる」など、様々なものがありますが、ここで対策を誤ると、兄弟の仲だけでなく、親族全体の関係を悪化させてしまうことにもなりかねません。

この記事では、遺産相続の際兄弟間で起こるトラブルの例やその解決方法について紹介していきます。

トラブルの原因の代表格/思いもよらない遺産

遺産相続のトラブルは、何も資産家家庭でのみ起こる事ではありません。
統計によれば、1,000万円以下の相続争いが全体の32%、5,000万円以下であれば全体の42%と、一般家庭の小規模な資産レベルでも争いは起きています

その中でも、特に兄弟間の相続争いの原因として代表的なのが「思いもよらない資産があった、もしくはなかった場合」です。

確かに、把握していない資産がいきなり発見されれば、お互い「少しでも多くの資産がほしい」と思うのは当然ですし、思ったほど遺産がなかった場合でも「もしかしたらどちらかが使い込んだのでは」と疑心暗鬼になってしまうことは不自然なことではありません。

他にも、証券や土地・建物が複数あったり、資産が一軒家だけの場合などは、公平に分配することが難しいので、トラブルの原因となる場合があります。

兄弟間での相続トラブル事例紹介

兄弟間での相続トラブルには具体的にはどのようなものがあるかを見ていきたいと思います。以下にいくつかまとめてみました。

1.父名義の土地に長男名義の家が建っている場合

長男Aは父名義の土地に家を建て、A家族とAの父母と同居していた。そんな中、父が亡くなった。父の遺産は2,000万円相当の土地(Aの家が建つ土地)と預貯金が1,000万円。

Aは「父の土地には自分が家を建てているし、自分が土地を相続すべきだ」と考えていたが、Aの兄弟であるBとCは「本来であれば遺産は3等分しなければならない。Aの家が建っているからと言ってそのまま土地が相続されるのは納得がいかない」と主張した。

2.親の介護負担に偏りがある場合

長男Aは独居する父の近所に住み、妻と協力し面倒を見ていた。AにはBとCの兄弟がいたが、遠方に住んでいるため父の介護に協力することはほとんどなかった。
このような背景の中、父が亡くなった。

父の遺産を分割するにあたり、Aは「父の介護をずっと担当してきたのは自分と妻だ。
我々には遺産を多く相続する権利がある」と主張したが、BとCは「遠方に住んでいる自分たちが介護に協力できないのはやむを得ないことだし、近くに住むAが父を介護するのは子として当然だ。

遺産は法定相続分をベースに分割すべきだ」と主張した。

3.兄弟間で遺産に対する考え方が違う

長男Aも次男Bも、独立しそれぞれの家庭を持っていたが、父が亡くなったことで遺産相続の必要が出た。
父は生前から「先祖代々の土地や家は長男Aに継がせたい」と言っていたし、Aもそのつもりでいた。

しかしBは「それは戦前の旧民法時代の話だ。今はそのような考え方は法的にも認められていない。法定相続分に基づく遺産分割を要求する」と主張した

4.親の財産内容が不透明な場合

長男Aは父と同居しており、父が認知症になってからは預貯金などのほか、父が趣味で集めていた美術品など財産の管理も行っていた。

父が亡くなった後、遺産分割について遠方に住む兄弟Bと遺産分割について話し合ったが、口論となった。Bは「遺産が少なすぎる。特に父が集めていた美術品の点数が減っている。

Aが勝手に売りさばいたのではないか」と疑いを持つも、Aは「父の美術品が減っているのは、父の認知症が悪化する前にいくつか学校などに寄付をしたからだ。

また、父の集めた美術品には贋作も多く、全体ではそれほどの評価額にはならなかった。なぜ私が疑われるか理解できない」と反論した。

トラブルの避け方/法定相続分を参考にする

兄弟間の相続トラブルを防ぐには、「法定相続分」をもとにするという方法があります。
法定相続分とは、民法900条によって定められた、遺産を分ける際の目安となる割合です。

あくまでも目安なので、無理に従う必要はありませんが、話し合いで折り合いがつかない場合の基準にはなります。

参考までに、民法900条が定める、遺産の分け方の割合を以下に引用します。

 
民法900条【法定相続分】
同順位の相続人が数人あるときは,その相続分は,次の各号の定めるところによる。
子及び配偶者が相続人であるときは,子の相続分及び配偶者の相続分は,各二分の一とする。
配偶者及び直系尊属が相続人であるときは,配偶者の相続分は,三分の二とし,直系尊属の相続分は,三分の一とする。
配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは,配偶者の相続分は,四分の三とし,兄弟姉妹の相続分は,四分の一とする。
子,直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは,各自の相続分は,相等しいものとする.ただし,嫡出でない子の相続分は,嫡出である子の相続分の二分の一とし,父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は,父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

分割の方法を話し合っておく

相続するのは分けやすい預金や現金だけではありません。
土地や建物、証券、骨董品など分けるのが難しいものもあります。

そのような場合、あらかじめ兄弟間で分割の方法を定めておくという方法もあります。
具体的には、以下のような分割方法があります。

現物分割

どの財産を誰が相続するかを現物によって分割する方法で、最もポピュラーなやり方です。

換価分割

遺産を売却し、現金に換えた上で分割を行う方法です。分けにくい土地や建物などを相続する際に適したやり方です。

代償分割

ある相続人が全ての遺産を相続する代わりに、他の相続人に対し、その分に応じたお金を支払う方法です。

共有分割

遺産を相続人で共有する方法です。この方法は、根本的な解決法ではないので、新たなトラブルが発生する可能性があります。

遺言による指定

遺言は法定相続分よりも優先されるものなので、ここに書かれた分割方法には従わなくてはなりません。しかし、そのルールは厳格ですし、遺留分を害することはできないので、遺言書で相続人に指定されていなくても全く遺産が相続できないわけではありません。

トラブルが起こる前に弁護士や専門家に相談

お金に絡むトラブルは、往々にして長引き、人間関係を破たんさせることがあります。
それが兄弟間のことであれば、家族の絆に修復不可能な亀裂を入れてしまうことになります。それを防ぐためにも、できるだけ早い段階で、法のプロである弁護士を間に入れ、お互いにとって最適な方法を見つけることをおすすめします。

当窓口では相続に卓越した弁護士に加え、税理士や不動産鑑定士等、各士業が連携してお客様のトータルサポートが可能です。
悩む前に、まずはお気軽にご相談ください。